少年の精神医学的な診察をしようとして、私が病床に近づいたとき、彼は落ち着いて見えた。 少年の母親はそばに座って編み物をしていた。私は歩み寄って少年に挨拶をした。 すると、突然少年は私を見て「苦しい！苦しい！」と叫び始めた。 動物と戦う英雄を描いた円筒印章（左）とその印影。マリのイシュタル神殿で発見、紀元前2600年頃のシュメール初期王朝時代、ルーブル美術館所蔵 原始的な印章は中東の遺跡（紀元前7000年 - 実印通販 6000年頃）から発掘されていて、紀元前5000年頃に古代メソポタミアで使われるようになったとされる。最初は粘土板や封泥の上に押すスタンプ型の印章が用いられたが、後に粘土板の上で転がす円筒形の印章（円筒印章）が登場し、当初は宝物の護符として考案され、のち実用品になったが、間もなく当時の美意識を盛り込んだシリンダー・シールとなった。紀元前3000年頃の古代エジプトでは、ヒエログリフが刻印された宗教性をもったスカラベ型印章が用いられていた。それ以来、認証、封印、所有権の証明、権力の象徴などの目的で広く用いられた。これがシルクロードを通って古代中国に伝わったのは、かなり遅れて戦国時代初期（紀元前4、5世紀）であったろう。その図象を鋳成した青銅印を粘土に押し付けると、レリーフ状の図象が浮きあがり、シリンダー・シールとの文化的連続性は否定すべくもない。 こんなドラマティックなヒステリー症状を目の当たりにした私は、すぐ母親に尋ねた。 「いつからこんな具合なんですか？」 母親は顔も上げないで答えた。 「さっきからです。先生が息子の酸素のチューブを踏んでからです」